台湾の天才デジタル大臣オードリー・タン氏からみる教育の意味

グローバル社会

今回のコロナ禍で台湾は世界でもコロナの封じ込めに成功した数少ない国の1つとしてよく取り上げられています。この封じ込めに一役買った人物が、台湾のデジタル大臣であるオードリー・タン氏です。史上最年少で行政院に入閣し、台湾のデジタル政策においてその非凡な手腕を発揮し、今回の世界規模のパンデミックでもデジタルで数々の課題を解決してきました。台湾の政府の行動の速さの裏には、こうした最新のデジタル化が大きく関わっているのでしょう。

本日は、この天才とよばれるオードリー・タン氏が幼少期にどのような教育を受けてきたのか、またタン氏がこれからの教育に何が必要であると考えているのかなどについて書いていこうと思います。

幼少期に親から受けた教育

協働という事の大切さ
協働とは、周囲を巻き込み、活動の輪を大きくしていくことを意味します。文化や国籍、人種、地域を超えた協働は、経験を積み重ねることによってできるようになってきます。人間が産まれてから一番初めにできる「協働」は親子です。親と子という世代を超えた協働です。特に今はコロナ禍なので異なる文化や言語に触れたりすることが今までよりは難しくなっています。そんな中、親と子で研究チームを結成することはできます。

タン氏は幼少期から両親に多くの質問をしていたそうです。両親がタン氏がした質問に対する答えを知らなかった場合、「それは私も知らないな。じゃあ一緒に図書館に行って調べてみよう」という対応をしてくれたそうです。親だけでなく親戚や周りの大人もそうだったそうです。

そんな環境で育ったタン氏は、物事の答えを「教えてもらう」のではなく、「一緒に答えを探す」ことが当たり前だったのでしょう。これはまさに、日本の教育に今最も必要な事の1つです。保護者や保育者が子どもたちに何かを教えるのではなく、子どもと一緒になって考える、答えを探す、こうしたことが子どもの非認知的能力を育んでい行きます。

批判的思考と創造思考
タン氏の父親は、ソクラテス式問答法(問いを立て、それに答えるという対話に基づいて批判的思考を活性化させ、考えを明らかにする方法)が得意だったそうで、タン氏が子どもの頃からこのようなアプローチで接していたそうです。つまり、大人から子どもに何の概念も植え付ないという考え方です。これはつまるところ、批判的思考能力(Cretical Thinking)を向上させるという事です。

一方タン氏の母親は創造思考(Creative Thinking)を重要視していたそうです。創造思考とは、既存の型や分類などにとらわれることなく、自分の方向性を見つけていくことを意味します。個人的な考えを言語化し明確に説明することが出来れば、自分と同じ考えを持った人が集まります。そうすると自分の考えは個人の考えから公共性のある考えになります。そうした人たちが「今ある問題をどうすれば解決できるか」と考えることが出来るようになります。いわゆる社会的アドボカシーです。

私にとって社会的アドボカシーとは「日本の幼児教育」です。これからの時代を生きていく子どもたちにとって必要な教育を提供しなければなりませんが、既存の教育ではそれが難しいのです。そこで、我々と同じ考えをお持ちの方々と共に「どうすれば日本の幼児教育を変える事ができるか」を考え、それを実行に移していくだけの影響力を得る事が必要であると考えています。

話を戻しますが、今のオードリー・タンという人物の人格形成は、父親からはCritical Thinking(批判的思考)、母親からは Creative Thinking(創造思考)の教育を受けてきたことによるところが大きいのではないでしょうか。タン氏のような方がこれからの時代を作っていく、そしてこれからの時代に必要とされる人物像の1つではないかと思います。

オードリー・タン氏が見るこれからの教育に必要なこと

タン氏は、これからの時代に必要な教育について、「これからの時代は学び続ける事が大切です。そしてともに学び、ともに創造し、ともに発想する仲間をもつことです。」と言っています。

学習することは子どもだけではなく「生涯学習」が当たり前の時代に突入しています。一生学んでいくと言いますが、実際に何を学べばいいのでしょうか?英語ですか?プログラミングですか?今まではその「何を学ぶ」という、その時代にあった明確なスタンダードな答えがありました。

しかし、時代の流れが速い現代やこれからの未来は、その明確な「答え」というものありません。色々と新しい考えや技術が生まれ、それを学ぼうと思ったらすでに「古い」ものになっているという時代です。しかしそんな時代でも現実と対峙していかなければならないのです。タン氏は、「次々に立ちあらわれる問題については、その人の頭脳と心をもって解決していくしかありません」と語っています。

これからの時代、子どもはもちろんですが、大人である我々も非認知的能力を育んでいかなければなりません。我々の提供している幼児教育は「子どもに対して非認知的能力を提供」しているだけではなく、それを教える保育者、保護者、並びに地域の方々に対してもこのような考え方を伝えていくことが大切であると感じています。

子どもは大人の言う事を聞くのではなく、大人のやっていることをマネします。つまり、大人が出来ない事は子どもはしません。我々大人は子どもにとって最善のロールモデルになるべきです。そのためにも大人である我々がその「変わる」ためのマインドを持って自ら考えて行動できるような人間になる必要があるのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました