何歳だったか、正確な年齢は覚えていませんが、6歳か7歳位だと思います。クリスマスイブの夜に弟と興奮して布団に入って話していたのを覚えています。「今日の夜サンタさんがプレゼントを持ってきてくれるんだよ。名にもらえるんだろう、楽しみだな。」このシーンは何十年たった今でも鮮明に覚えています。そしてその楽しみな気持ちと共にいつの間にか寝ていました。
夜中、おしっこに行きたくなり目を覚ますと、枕元に母親がちょうどプレゼントを置いているところでした。最初は寝ぼけていたのか、情況が把握できませんでしたが、母親がプレゼントを枕元に持ってきた事を確認できました。その時の気持ちは「あっ、噂は本当だったんだ。サンタクロースなんていないんだ。」でした。親は私たち兄弟にサンタクロースについてウソをついていたのです。私が突然目を覚ましたことに動揺していた母親はサンタクロースから預かったから今枕元に持ってきた的な言い訳をしていたと思います。ただ、母親に対して怒ったりムカついたりはしませんでした。
子どもは大人の行動を見てマネする
結局のところほとんどの親は子どもにウソをつきます。アメリカのある調査によるとアメリカ人の親の84%は何らかのことについて子どもにウソをついています。親が子供にウソをつく主な理由は、子どもを管理(コントロール)するためです。日本でも「早く寝ないと鬼がくるよ」とか「ご飯を残すとお化けがくるよ」など言う方も多いですよね。その研究で一番よく疲れるウソが「子どもが親に従わないとその場に置き去りにする」という事でした。
一般的な経験則として、親が子どもに対してウソをつく事はやめるべきでしょう。最近の研究で面白いものがありました。親が子どもに対してウソをつくことに関して、現在大人の被験者に対して、大人になってから両親からウソをつかれたことがあるかを尋ねました。大人になってから両親からウソをつかれたことのある大人は、両親に対してウソをつき返す傾向が高い結果が出ました。さらに、他の人と比べて心理的社会的適応力が低かったという結果も出ました。
上記の研究結果からもわかる通り、あなたは親として子供に対して良いお手本にも悪いお手本にもなることが出来ます。子どもに対してウソをつくなど不誠実な親であることは、あなたの子どもの人生が大変になることを意味します。
子どもにウソをつくことは、将来的に問題を引き起こすだけではなく、もっと直接的な問題があります。アメリカのある研究では、大人を誠実で正直な行動をするチームと不誠実で嘘つきな行動をするチームに分けました。誠実な大人を見た子どもは、すぐに誠実で正直にふるまおうとする傾向が強く、反対に不誠実な大人を見た子供は、すぐに小さなウソをつきはじめるという傾向がみられました。
子どもにウソをつくことは、今まで築いてきた子どもとの関係を壊すことに繋がります。子どもは大人が思っているよりはるかにウソを見破ることが出来ます。大人が子どもに対してウソをつくなど不誠実な対応をした場合、子どもはその大人に対して信頼しなくなる傾向が高いことがわかりました。私たち親は子どもに信頼される親になりたいと願っていると思いますが、信頼を得るには日々の子どもとの関係性から少しずつ築いていくものです。しかし信頼を失うのは一瞬です。子どもに誠実に向き合うことがどれほど大切かおわかり頂けたかと思います。
サンタクロースの存在についてどう説明するか
さて、本題に戻りましょう。サンタクロースについて子どもにウソをついてもいいのかどうかを考えてみましょう。年に一度ある老人があなたの家に侵入してクッキーを食べておもちゃを置いていくことを小さい子どもに説明するという事に問題があるのでしょうか?まずは心配しないでください。世の中のほとんどの親が子供に対してサンタクロースのウソをついています。そしてそのほとんどの子どもがその話を真実だとして受け入れています。
実際にほとんどの親はサンタクロースの話を子どもに信じてもらうために一生懸命です。しかしそんな両親の努力の裏で、ほとんどの子どもたちは7歳になるまでにはサンタクロースがいないという現実を理解します。その真実を知ったときの子どもの反応は今までウソをついてきた親に対して憤慨すると思いますか?実は全くその逆なのです。子どもたちは真実を学ぶことに対して非常に前向きな反応を示すのです。
ドリュー・カーティス博士による最近の研究では、博士は多くの大学生に対して、両親からサンタクロースがいると聞いて育ったかどうかを尋ねました。また、そのことについて彼らがどう感じていのか、そして彼らと両親の現在の関係はどのようになっているのかも併せて調べました。その結果、ほとんどの学生は両親がサンタクロースについてウソをついていたと言っており、またそのウソについて少なからずショックだったと感じたことを確認しました。ただし、サンタクロースのウソが、現在の大学生と両親の関係性に影響するという事は全く見られなかったと結論付けました。
結論
子どもには常に「ウソをつくことは悪いことだ」と教えている以上、子どもにウソをつくという事は一般的には悪いことです。ただし、サンタクロースについて話すこと自体が、子どもの人生を台無しにしたり、子どもと親の関係が最悪なものになることにはなりません。実際に私も子供の頃、親がおもちゃを枕元に持ってきた時の事を考えても、それが理由で大人がウソつきだとか信頼を失ったとかいう考えにはなりませんでした。それよりもサンタクロースが来ることを期待して弟と一緒にワクワクしていた楽しい時間のがとても貴重でした。
人生で魔法のようなことが起こることはそんにありません。子どもがサンタクロースがいない事がわかる年齢になるまでの人生の最初の数年間、そんな魔法の世界でワクワクできる時間は子どもにとってはかけ外のないものになります。実際に私たち大人もその時期を過ごしてきました。子どもがサンタクロースの存在について否定してきた時に、しっかりと子どもと向き合って真実の話をしましょう。
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