スマホやタブレットが一般家庭に浸透して10年以上経ちますが、小さい子供がいらっしゃるご家庭での永遠の課題の1つに、幼少期からスマホやタブレットなどのデジタルデバイスを見せていいのかどうかという事があります。今回はこの永遠の課題に対して、米国心理学会:APA(American Psychological Association)の研究論文に基づいて解説していきたいと思います。
2007年にiPhoneがアメリカで販売されてから14年経ちますが、子どもとデジタルデバイス問題はそこから始まりました。つまりまだ14年の歴史しかない新しいものです。つまり、この分野の研究はまだ長い時間かけて行われていなかったので、決定的な研究結果があるわけではありませんでした。
しかし現在では、心理学者や児童発達の専門家などの多くの研究者が、子どもたちのデジタルデバイスを使ってどんな内容のコンテンツを購入したり閲覧しているのかを注意深く研究しています。
その研究は「教育ツールとして使用できる」コンテンツなどデジタルデバイスから得れる潜在的利点と、子どもたちの身体的、精神的健康に悪影響を与える潜在的欠点の両方の観点から研究されています。それでは様々な研究結果を交えながら、この問題について探っていきましょう。
今回の内容は3部に分けてお話しさせて頂きます。本日は幼児とデジタルデバイスなどのスクリーン時間に関する内容を見ていきたいと思います。
幼児とデジタルデバイス使用時間について
上述したとおり、初代iPhoneが発売されたのが2007年で、iPadが発売されたのが2010年でした。もちろんテレビはファミコンなどのゲームは何十年前から存在していますが、テレビなどはスマホなどと比べて「いつでもどこでもアクセスできる」ようなものではありませんでした。
デジタルデバイスの急速な進化と変化の中で、世界保健機構(WHO)や米国小児科学会:AAP(American Academy of Pediatrics)などの専門機関が勧告し始めました。AAP曰く、ビデオチャットを除いて18~24か月の子どもはデジタルデバイスを使うべきではないと呼びかけており、2~5歳の子どもに関しては、デジタルデバイスを使わせるのであれば1日あたり1時間以内までとするべきだと伝えております。
また、もう少し年齢のいった子ども向けに「ファミリーメディア使用プラン(Family Media Use Plan)」が作られました。このプランでは親と子どもがデジタルデバイスを使う時間や制限などについて話し合いを設けるというものです。WHOは、幼児の身体活動、座って行う行動、睡眠に関するガイドラインで次にように伝えています。2歳児未満の子どもにはデジタルデバイスの使用をさせないこと、2歳~5歳の子どもには1日1時間未満の使用を推奨するとしています。
ただし、一部の評論家はこのガイドラインを裏付ける研究の多くは、相関関係、自己申告に基づいているので信ぴょう性に欠けると非難しています。さらにデバイスを使っている時間をビデオチャットをしている時間も、ゲームをしている時間、動画閲覧している時間も一律でまとめられているとの事です。
理想的な研究であれば、子どもがどんなコンテンツをどの位使用しているのか、カテゴリー別に分けたりすることですが、現実的には難しい問題です。明らかなことは、多くの親が上述のガイドラインで提案されているデバイス使用推奨時間を子どもに対して行っていなかったことです。
例えば、フロリダ国際大学の経済学者ウェイウェイ・チェン博士が行った2019年の研究によると、2014年時点でアメリカの2歳以下の子どもは1日平均3時間3分デジタルデバイスを使用していることがわかりました。1997年には1日たったの19分だったのが、17年間で9倍以上の使用量になっています。
定性調査では、デジタルデバイスが広く使用されている理由がいくつか示されています。例えば、ラトガース大学栄養学教授のキャロル・バード・ブレッドベナー博士が2015年に行った、就学前の子どもを持つ 133 人の親を対象とした 1 つの調査では、多くの親が、子どもデジタルデバイスにとって代わる手頃な価格のおもちゃなどがないと報告していることがわかりました。
また、その他の子どもにデジタルデバイスを使わせる主な理由として、自分が疲れているから見せている、家事をしている時に楽だから見せている、天気が悪くて外遊び出来ない時に見せているなどがありました。
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