スマホやタブレットを幼児期から見せている人必見!③

子育て方法

前回は未就学児のお話し、その前は幼児期の子どもとデジタルデバイスに対する関わりについての論文をベースにお話ししました。今回でスマホやタブレットシリーズ最終話です。10代の子どもに対する影響、そして親としてデジタルデバイスを使うテック世代の子どもとのかかわり方などについてみていきましょう。

10代の子どもとデジタルデバイスの関わり

子どもが大きくなるにつれてテレビやゲーム、ソーシャルメディアを使ってより多様なコンテンツを含むデジタルデバイス使用時間が増えます。非営利団体のCommon Sense Mediaが2019年10月に発表したレポートによるとアメリカの8~12歳の子どもは現在娯楽としてデジタルデバイスを1日平均4時間44分使用しており、13~18歳は7時間22分もの時間を費やしています。これらの数字には、タブレット等を使って勉強や宿題をしている時間は含んでおりません。

Commo Sense Mediaのデータでは、親の経済状況に基づくメディア使用時間に大きな違いがあることも明らかにしています。高所得世帯の8~12歳の子どもは低所得世帯の同年齢の子どもと比べて1日1時間50分デジタルデバイスの使用時間が短いようです。13歳以上の年齢の子どもたちも同様な結果になっています。

少し前の調査では、低所得世帯の子どもたちのメディア使用時間の増加は親が子どもを守るためにしている可能性が示唆されています。複数の国での研究によると、治安が悪いエリアの家庭では、そこに住む子どもたちのメディア使用時間が長い事、そして外遊びの時間があまりない事が関連している事がわかっています。

例えば、アルバータ大学の健康研究者であるヴァレリー・カーソン博士と、オンタリオ州キングストンにあるクイーンズ大学のイアン・ヤンセン博士が行った2018年の研究では、犯罪率が高くギャングなどが多く住んでいる治安の悪いエリアに住んでいる子供たちは、デジタルデバイスを使用する時間が40~60%も高かったと伝えています。反対に購入集世帯の子どもは課外活動やクラブ活動などをしているため、メディア使用時間が低所得世帯の子どもたちと比べて少なくなっているのかもしれません。

小さな子どもと同様に、10代の若者のメディア使用時間が長い事に対して懸念しなければならない理由があります。相関的研究によるとメディア使用推奨時間を超えてデジタルデバイスを使っている8~11歳の子どもは、認知機能テストを受けた結果、認知スコア全体の20%に間違いがみられました。また、子どものメディア使用時間と睡眠不足が子どもの高い衝動性と関連があると伝えています。

しかし、オタワ大学の心理学者で両方の研究を共同執筆したゲリー・ゴールドフィールド博士は、メディア使用時間と睡眠不足が子ども衝動性を引き起こすかどうかについて、この研究は因果関係を示すには不十分であったと言っています。反対に衝動性の高まりや低い認知力が過剰なメディア使用時間を引き起こしている可能性があると言っています。

しかしながら、その後のゴールドフィールド博士の研究チームが行った多くの研究では、1日維持間の運動、8‐10時間の睡眠、2時間以内のデジタルデバイス使用している10代の若者は、最高の精神的健康と認知能力があることがわかりました。

また、彼らはここでも10代の若者のデジタルデバイス使用時間と健康に様々な関連性を見つけましたが、双方の因果関係を立証するのは非常に困難でした。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の心理学者ネッツァ・スティグリック博士とラッセル・ヴァイナー博士が発表した2019年の研究結果によると、最も強い関連性が見られたのは、デジタルデバイス等のスクリーン時間と肥満、スクリーン時間と抑うつ症状にありました。

肥満に関する研究のほとんどはテレビ視聴を中心にしており、テレビ視聴時間が多くなると、肥満度指数または体脂肪組成が高くなることがわかりました。複数の研究結果では、1日2時間以上のテレビやデジタルデバイスなどのスクリーン使用が、抑うつ症状と相関している事もわかりました。

また彼ら、はスクリーン時間と生活の質の低下、カロリー摂取量の増加、および食の健康状態の低下に関するエビデンスを発見しました。しかし、スクリーン時間と行動問題、不安、幸福感や自尊心の低さなどの問題に関連づける証拠としては不十分でした。

ケンブリッジ大学の心理学者エイミー・オルベン博士とオックスフォード大学のアンドリュー・プシュビルスキー博士が行った研究では、スクリーン時間をデジタルデバイス使用時間で測定されていることがわかりました。ちなみに、それまでのほとんどの研究では、スクリーン時間は保護者の自己申告がほとんどでした。

アメリカ、イギリス、アイルランドの全国的な研究データによると、概してスクリーン時間は10代の心理的幸福に目立った影響を及ぼしませんでした。しかし、他の研究は、スクリーン時間と幸福の間の複雑な関係を指摘しています。たとえば、スイスのローザンヌにある社会予防医学研究所の医師ピエール・アンドレ・ミショー医学博士が2011年に行った研究では、インターネットの使用と青年期の精神的および肉体的健康との間にU字型の関係があるとしています。

「子どもたちがメディアをどのように使用しているか、両親がメディアの使用をどれだけ監視しているか、どれだけの時間を費やしているか、正確に何を見ていて、どう使用しているかによって大きく異なります」と、小児科医で名誉教授のビクター・ストラスバーガー医学博士は述べています。

これからの研究と親の役割

2015年に国立衛生研究所は、アメリカで10代の若者の脳と行動の発達に関する史上最大規模の長期的研究「青年期の脳認知発達研究」への資金提供を開始しました。この長期的研究によって、青年期とスクリーン時間に関する未解決の問題を明らかにする可能性が非常に高くなってきました。

この研究では1万人以上の9~10歳の子どもを成人期まで追跡します。研究はすでに始まっており、先日したゴールドフィールド博士の「認知と衝動性」に関する研究はこの「青年期の脳認知発達研究」のデータから引用されています。

この研究はまだ追跡中ですが、研究結果が明らかになるまでの間は、デジタルデバイスを含むメディアの使用に関して保護者は注意して子どもに使わせるべきだと推奨している専門家もいます。

テキサス州立大学の心理学者であり2018年の本「TechGeneration: Raising Balanced Kids in Hyper-Connected World」(テック世代:超デジタル連結世界でバランスの取れた子どもを育てる)のマイク・ブルックス博士と共著者であるジョン・ラサ―博士は、単にスクリーン使用を禁止する事は裏目に出る可能性があると言っています。

「子どもが自己管理する能力を発達させることは重要です。そして、子どものスクリーン時間を細かく管理しようとする親は、子どもの「自己管理」の発達を妨げる可能性があります。」とラッサ―博士は言います。

ラッサ―、ブルックスの両博士は、彼らの本に「FAST」と呼ばれるスクリーン時間に対する家族評価というツールについて書いています。これは、家族が子どものスクリーン時間について自分の気持ちやお互いの気持ちを測るために使用できます。

例えば5歳以上の子どもと親がスクリーン使用時間の制限時間や使用限度などについて交渉します。そして、親はデジタルデバイスを含むメディアを子どもと一緒に視聴する必要があります。ストラスバーガー医学博士によると、「メディアを中心にオープンなコミュニケーションをすることで、子どもたちにとってみるべきでないコンテンツに遭遇した場合、子どもたちを保護する事が出来ます。子どもとメディアとの健全な関係性を保つことは、必要な時に制限時間を設ける事を容易にします。

ラッサ―博士は「私たちが親に言える事は、子どもたちと一緒に時間を過ごすことです。このシンプルなことで、子どもとの関係性もより良いものになります。」と言います。

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